〈予算委員会〉
高田由一議員の質問

談合問題と入札制度の改善について】
高田
 今回の談合疑惑をきっかけに、私は県の土木部あるいは振興局の建設部の発注した平成十二年度の工事の入札結果を調べてみた。本庁の土木部で入札する五億円以上の工事では平均の落札率、つまり予定価格に対する落札価格の割合が九十八.五%だった。同じく西牟婁振興局建設部発注の一億円以上の工事については平均九八%の落札率だった。同じく海草振興局建設部では平均九三.九%だった。しかも、私が調べた中では、海草の取り扱い分のなかに一件だけ六三%というものがあったが、あとはすべて九六%という驚異的な高値貼り付きだ。こういう状況のなかで談合は全くないと考えているのか。
 ■木村知事 談合が、公共事業に対する信頼を損なうものであることはまちがいない。公共事業のあり方が問題にされているなかで仮に談合があったとしたら、県民の利益を損なうことになる。厳密な対応を行った。不適正な取引は絶対にあってはならないことだ。
 ■大山土木部長 情報と落札が一致すること、落札率が高いだけで確認出来ない。競争を妨げ、県民の利益を損なうことはあってはならないこと。県民の利益を守る立場で厳正に対処し、不正行為の防止に取り組んでいく。

(高田県議が明らかにした入札の資料へ
高田
 私は、和歌山市が平成十二年度に発注した一億円以上の工事も調べてみた。これは平均で七九.三%の落札率だった。しかも下は五一%から上は九六%とばらついている。同じ和歌山市地域の工事発注でも、落札率が県工事だと約九四%(海草振興局建設部発注分)、市の工事だと七九%だ。これは県工事で談合がなされている疑いがあるといえると思うがいかがか。
 ■大山土木部長
 落札率が高いだけでは事実が確認できない。


入札制度の改善についての提案】
高田 談合情報マニュアルについて。これは談合情報があったときにどう取り扱うかを決めたものだが、効力はないと考えている。県工事に関する大きな談合疑惑はこれまでにも九七年に行われた県立五稜病院の例があった。これは約七十八億円もの大事業だったが、参加企業名を公表しない一般競争入札であったにもかかわらず、入札二日前の談合情報どおりの企業体が落札をした。そのときも調査はしたが、結局「談合は確認できなかった」とのことで契約を結んだ。企業の側が談合の事実を認めなければ談合はなかったということになるというようなものではなく、もっと有効な談合情報マニュアルに改善すべきだ。

 ■大山土木部長
 独自に積算しているかどうか、工事費内訳書の提示も求めて審査している。内容の充実を図っていく。


高田
 「疑わしきは契約せず」ということを原則にしていただきたい。和歌山市の事例だが、平成十一年の十二月に下水道工事の談合情報があって、十三の業者がある集会場に集まり話し合いをするという情報が入った。事実その通りの集まりがあったので、市は、三カ月の指名停止にして業者を入れ替えて入札した。その時の新聞によると市は「確証がなくても疑わしい場合は指名停止を含む厳しい姿勢で臨む」とコメントしている。私は適切な措置であったと考えている。しかし、県の談合マニュアルどおりでは、こうした事例でも業者が口を割らない限り「シロ」になる。談合の疑惑がでたときには、やはり「疑わしきは契約せず」の姿勢でいくことが大切だと考えるがいかがか。
 ■大山土木部長 事実を確認できるかどうかがポイントである。できなかったものについては契約している。今回、賠償の予定条項なども盛り込んだ。


高田 入札参加者の事前公表の問題。市民オンブズマンの指摘でも入札の前に、指名業者を公表することは、談合をしやすくしていると言われている。例えば三重県久居市では指名業者を公表せず、それまで九七.八%だった落札率が七五%前後になっている。長野県の場合は、今年から指名業者名の公開は入札後となった。それについての「建設ITニュース」という業界紙では、次のように書いている。「入札・契約の公表の時期で、業界が直接影響すると思われるのは、競争相手が入札当日まで判明しない点」と述べてその影響を心配しているほどだ。また、北海道でも入札まで指名業者を明らかにしていない。

 さらにまた、和歌山市の例だが、平成十二年一月から、六千万円以上の土木、建築工事の指名を抽選方式でやっている。抽選に当たった業者は他の業者の指名が一巡するまで抽選からはずれ、指名機会の均等化にも配慮しているという。平成十二年度の落札率は抽選式の前が約八八%、抽選式を取り入れてからは約六三%になっている。実に二五%もの差がでている。これですべて談合がなくなるというわけではないが、有効な一手段であることは確かだ。こうした抽選制度など、事前に競争相手がわからなくなる制度の導入を検討されてはいかがか。
 
■大山土木部長 事前公表によって、入札参加者を探ろうとする不当な圧力を排除していく。

高田
 国土交通省が設置している入札監視委員などの第三者機関を和歌山県でも設置してはどうか。すでに北海道では「入札等管理委員会」の名で、三重県では「公正入札調査委員会」の名で組織を立ち上げている。本県でも設置すべきではないか。

 ■大山土木部長
 平成十三年七月現在、九道県で設置されている。設置する方向で検討していく。


高田
 裁判所に提出された市民オンブズマンの見解では、談合による県の損害額は平成九年度だけでも約七十六億円にものぼるという。貴重な財源をつくるうえでも、知事の勇気ある決断をもとめたいが、談合に対する知事の姿勢をあらためてうかがいたい。
 ■木村知事 厳正な方法を考えていきたい。


【七川ダムについて】
高田
 古座川の治水計画を考えるときダムでの河川への流量調節の能力に頼りすぎである。七川ダムは二川ダムと比較して、ダムが多くの水をため込むことになっている。それだけ下流の流下能力が低いということだ。ほんとうに計画どおりにダムのところで毎秒千三百八十トンの流入量に対処できればいいのだが、現実にはどうなのか。九七年七月の九号台風では流入量が最大九百七十三トンこれは計画千三百八十の七割の流入だが、それに対し放流は最大四百二十二トンと計画の一.三倍もの量を放流している。また、九八年九月の七号台風では、最大流入量九百三十一トンこれも計画の七割程度だが、それに対し最大放流量は六百六トン。これは計画の二倍近い量を放流している。流入は七割なのに放流は二倍と、完全に計画が狂っている。つまり、千三百八十トン入っても、ダムで千六十トンカットして、三百二十トンしか流さないというのはまさに絵に描いた餅にしかなっていない。

 なぜそうなるのか。その秘密はダムを設計したときに、参考にした降雨のパターンが極端に短時間の集中豪雨を参考にしているからだ。計画上のダムの放流パターンは、昭和三十一年に完成したこのダムでは多分、昭和十四年十月の集中豪雨の潮岬でのデータに基づいて設計されている。というのも、同じ年代につくられて今回問題になった那智勝浦町の太田川の小匠ダムも、それを参考にしているからだ。そのときの集中豪雨が短時間にものすごい雨が降っている。短時間に本当に理想的に雨が降って、その後急速にやめば今のダムでも対処できるが、少しでも降雨時間が長くなると計画の二倍もの放流をせざるをえなくなる。ぜひこの点に注意して見直していただけるよう要望する。